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VOL.140 2024/5/31 【代表取締役等住所非表示措置の開始について】


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vol.140本号の内容

2024年5月31日

  • 代表取締役等住所非表示措置の開始について

名古屋総合法律事務所
杉浦恵一

代表取締役等住所非表示措置の開始について


令和6年10月1日から「代表取締役等住所非表示措置」が開始されることになりました。法務省の説明では、「代表取締役等住所非表示措置」とは、一定の要件の下で、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービスに記載・表示しないようにする措置だということです。

これまでの会社の登記では、通常の取締役や監査役は名前のみの記載でしたが、代表取締役については住所も記載されていました。

その理由としては、これまでは①会社の信用性の担保としての理由(社長の住所も会社の信用性の一事情として考える場合がある)、②何かあった場合の連絡先(会社事務所の移転や閉鎖で会社に連絡が取れない場合でも代表者に連絡をとることができる)、といった目的で、代表者の住所が登記簿に記載され、誰でも登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すればみられるようになっていました。

しかし近年、プライバシーの観点から、住所が開示されると会社設立にためらいが生じるという意見があり、今回の代表取締役の住所を登記事項証明書に表示しない措置をとることになったようです。

この代表取締役等住所非表示措置をとると、現在は番地等まで表示されている住所が、今後は市区町村まで(東京都では特別区まで、指定都市では区まで)の表示で済ませることができるようです。ただし、登記の際に提出する書類には住所が分かるような書類も含まれていますので、住所を法務局等にも完全に非開示することができるわけではなく、また住所が詳しく載らないとしても、住所の変更があった場合には住所の変更登記を申請する必要がある点には注意が必要です。

法務省の説明では、この非表示の措置は当然に行われるわけではなく、登記官に申出をする必要があります。なお、代表取締役等住所非表示措置の申出は、設立の登記や代表取締役等の就任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限ってすることができるということで、好きなタイミングでできるわけではないようです。

この非表示措置ができる要件として、上場していない会社の場合には、 ①株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等、②代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書(住民票の写しなど)、③株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面を提出する必要があるということでした。

このような詳しい住所の非表示によって、代表者のプライバシーが守られるというメリットはありますが、逆にデメリットも考えられます。

現在は登記事項証明書に代表者の住所が載っていますので、会社の本店宛に連絡して届かない場合などには、会社の代表者に連絡をすることができます。

会社法上、代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(会社法349条4項)とされていますので、会社への連絡は代表者にすることも可能です。

しかし、会社の本店が移転したり、閉鎖してしまった場合には、会社そのものに連絡が取れないことも予想されます。

このような場合には、これまでは会社の登記簿謄本を見て代表者に連絡をすることができましたが、今後は簡単には会社の代表者の住所を確認することができない場合が出てきそうです。

法務省は、何か問題があった場合には、代表取締役等住所非表示措置を講じていても、住所が記載された書面を閲覧することについて法律上の利害関係を有する者は、登記簿の附属書類のうち利害関係を有する部分を閲覧をすることで、代表取締役等の住所の確認が可能だと説明しているようです。

しかし、この法律上の利害関係が有ることをどのように裏付けるのか、どのような資料があれば法務局が閲覧に応じるのか、その辺りが未知数ですので、この手続きに関しては今後の運用を見ていく必要があるでしょう。


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