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2023年11月1日
名古屋総合法律事務所
弁護士 杉浦恵一
2013年に施行された労働契約法の改正により、いわゆる無期転換ルール(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)が導入され、それから10年ほどが経過します。
この無期転換ルールを定めた労働契約法18条1項は、以下のような内容です。
「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。)の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。」
簡単に説明しますと、期間の定めのある労働契約(有期労働契約、例えば1年の契約で更新されている場合等)で働いている場合で、更新によって通算の労働期間が連続して5年を超えた場合には、労働者から雇い主に対して期間の定めのない労働契約に変更するように申込みをしたら、雇い主はこれを拒否できない(当然に期限の定めのない労働契約になったことになる)、という内容です。
またこれに加えて、労働契約法19条では、有期労働契約であっても、一定の要件(過去に反復して契約更新されたことがあり契約満了時に更新せず契約終了することが解雇と社会通念上同視できる、契約期間の満了時に契約が更新されると労働者が期待することに合理的な理由がある)があれば、同一条件での契約の更新を雇い主が拒否することができないとする条文もあります。
このようなことがあり、企業では、雇い止め条項(契約更新しない条項)/更新上限条項を契約書などに入れることが増えているようです。
このような条項の有効性については、最初の契約の時点で雇用契約書に雇い止め条項や更新上限条項が入っている場合には、労働者はそれも含めて契約するかどうか判断できることから、更新上限を定めることが直ちに違法とはならず、その条項に基づいて雇い止め・契約更新をしないことが認められています(横浜地方裁判所川崎支部 令和3年3月30日判決など)。
これは最初の契約の時から雇い止め条項が入っている場合であり、更新の途中からそのような条項を入れる場合には、労働者の自由な意思に基づくかどうか争われる可能性がありそうです。
このような動きも踏まえて、令和6年4月から労働基準法施行規則5条が改正され、雇い止め・更新上限などに関して、以下のような点を新たに明示しなければならなくなります。
このような変更はありますが、厚生労働省の調査では、調査対象となった事業所のうち無期転換を申し込む権利を行使した人がいる事業所は35.9パーセント(人の単位では27.8パーセント)で、そこまで多くはないようです。
必ずしも期限の定めのない雇用契約への転換を求める割合は多くはないようですが、このような更新上限などが雇用契約書などで説明されることになれば、この点での問題が増える可能性もありますので、注意が必要でしょう。
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