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2023年10月16日
名古屋総合法律事務所
弁護士 杉浦恵一
消費者庁のホームページでも告知されておりますが、令和5年10月1日からステルスマーケティングが規制されることになりました。
ステルスマーケティング(省略して「ステマ」)とは、法律上の定義がされているわけではありませんが、消費者庁のホームページでは、「広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すこと」と説明されています。
令和5年10月1日からどのように変わったかと言いますと、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の第5条で、事業者が提供する商品や役務の取引(サービス)について、一定の内容の表示をすることが禁止されていますが、その中にステルスマーケティングが含まれた、ということです。
具体的には、景品表示法5条3号で「前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの」が規制されていますが、この「内閣総理大臣が指定するもの」の中に、令和5年10月1日から「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が追加されることになりました。
この「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」がいわゆるステルスマーケティングを指すと理解されていることから、一般に10月1日からステルスマーケティングが規制されたと言われています。
しかし、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」といっても、具体的にどのようなものが該当するのか、分かりにくいと思われます。
消費者庁では、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準をホームページで公表して、ある程度の具体例を挙げています。
この運用基準では、規制される対象が、主には、外形上は第三者の表示のように見えるものが、実際には事業者の表示に該当すること、つまり事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合(客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合)とまとめられています。
例としては、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った広告(実際には事業者が自ら表示している)、事業者が第三者に対してSNS上や口コミサイト上等に商品・役務(サービス)を表示させる場合などが挙げられています。
この運用基準では、逆にステルスマーケティングに該当せず規制対象とならない場合(運用基準では「事業者が第三者の表示内容の決定に関与したとされないもの」)も解説されています。
事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるものであれば、事業者の表示(つまりステルスマーケティング)には該当されないと解説されています。
いくつか例が記載されていますが、
他にも記載されていますが、このような、表示する第三者が内容を自主的に決めることができるような場合には、規制の対象外とされるようです。
また、ステルスマーケティングで問題になるような、例えばSNS上で特定の誰か(知名度のある芸能人等)に広告をしてもらうこと自体が禁止されているわけではありません。
今回、禁止の対象となったのは、あくまで「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」です。
つまり、一般消費者が、事業者の表示(つまり事業者が行っている広告)であることが明確になっていれば、そのような方法での宣伝広告自体が禁止されるわけではありません。
この規制は、10月1日から開始されたところですので、運用基準が今後変わっていったり、消費者庁からの何らかの処分が出されるなど、今後の変化に注意する必要があるでしょう。
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