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2023年8月7日
名古屋総合法律事務所
弁護士 杉浦恵一
最近のニュースで、法廷で裁判官の指示に従わなかった弁護士が、身柄を拘束され、過料の制裁を課されたという報道がありました。
事案の概要としては、弁護士が法廷で録音をしようとしたところ、裁判官がそれを認めず、最終的に退廷が命じられても応じなかったため、手錠で拘束されて退廷させられた、という経過のようです。
その後、制裁裁判が開かれ、3万円の過料が課されたということでした。
裁判所で不規則発言などがあると、裁判官が発言を止めるように指示するなど、法廷では裁判官に秩序維持のための権限があると考えられます。
今回ニュースになった内容は、「法廷等の秩序維持に関する法律」という法律に基づいて行われたようです。
この法律の第2条1項では、以下のような定めがあります。
「裁判所又は裁判官(以下「裁判所」という。)が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害した者は、二十日以下の監置若しくは三万円以下の過料に処し、又はこれを併科する。」
なお、「監置」とは、留置場に留置することだとされています(同2項)。
この内容からしますと、①事件について手続をする際に、②裁判官の面前か裁判官が直接知ることができる場所で、③(1)裁判所が命じた事項を行わない・(2)裁判所が執った措置に従わない・(3)裁判所の職務の執行を妨害・(4)裁判の威信を著しく害した、という場合には、制裁が科される場合があるということです。
また、この法律の第3条2項では、「前条第一項にあたる行為があつたときは、裁判所は、その場で直ちに、裁判所職員又は警察官に行為者を拘束させることができる。この場合において、拘束の時から二十四時間以内に監置に処する裁判がなされないときは、裁判所は、直ちにその拘束を解かなければならない。」とされています。
つまり裁判官は、その場で行為者の身柄を(最長24時間)拘束することができることになっているようです。
制裁の内容が20日以下の留置場への留置か3万円以下の過料ということですので、留置場に最長で1か月近く拘束されるのは大変ですが、これまでの例では、科される制裁としては過料が多いようです(監置される例もあります)。
裁判官の判断で、その場で身柄拘束までできてしまう点で、権限としては強力ではありますが、基本的には裁判官の指示に従えば、制裁まで課される可能性は少ないでしょう。
ただし、過料とは、罰金や科料とは異なり刑事罰ではありません。
なお、法廷等の秩序維持に関する法律に該当するか否かと、法廷で行った行為が、業務妨害や脅迫などの別の犯罪に該当するか否かは別ですので、別に刑事事件になって処罰される可能性がある点は注意が必要でしょう。
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