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VOL.123 2022/12/21【生前贈与にかかるルール改正 - 贈与財産加算の対象期間を7年に延長】


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vol.123本号の内容

2022年12月21日

  • 生前贈与にかかるルール改正 - 贈与財産加算の対象期間を7年に延長

名古屋総合法律事務所
杉浦恵一

生前贈与にかかるルール改正 - 贈与財産加算の対象期間を7年に延長


はじめに

防衛費増額の財源を巡る議論が難航していた令和5年度の税制改正大綱ですが、先週16日に政府与党で決定されその内容が公表されました。

所得税額および法人税額に対して新たに課されることになる付加税の内容や施行時期に注目が集まっていますが、相続税・贈与税においても注目すべき見直しが大綱に盛り込まれました。

(1) 生前贈与加算の対象期間の延長

ここ数年の大綱では、その基本的考え方の中で、相続税・贈与税の資産再配分機能を強調した上で、格差の固定化を防止するための見直しの必要性につき言及しておりました。

今年度の改正で、相続税の計算において相続財産に加算する生前贈与の期間を3年から7年に延ばすというかたちでこれが実行されました。 これは一般に生前贈与加算と呼ばれる仕組みで、相続により財産を取得した相続人が、その相続の開始前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けていた場合、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算して相続税を計算するものです(相続税法19条)。

たとえ1年に110万円以内の贈与税が課されない贈与を行っていたとしても、相続開始前3年以内に行われたものは相続税計算に含められ、相続税が課されることになります。

亡くなる直前のいわゆる駆け込み贈与による過剰な節税対策を規制するための仕組みと言えます。

今回の改正では、「資産移転の時期に対する中立性を高めていく」という観点から、相続財産に加算する贈与の範囲を相続税開始前3年以内から7年以内とすることにより課税の強化が図られ、結果として相続税の生前対策の効果をより抑制するものとなりました。

この生前贈与加算にかかる改正の時期について大綱では「令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する」と書かれています。

すなわち、いきなり来年から7年に延びるのではなく、令和9年1月以降に開始になる相続から加算の対象期間が自動的に延び、令和13年1月以降に開始になる相続より7年で固定される仕組みとなるようです。

結果的に令和8年12月までに開始される相続についてはこれまでどおり3年以内の贈与のみが加算対象となります。

この関係で、令和5年末までの贈与と令和6年以降の贈与には違いはあることになりますが、人の亡くなる時期を知ることはできませんので、その効果のほどはケースにより異なるということになります。ただ、生前対策は早め早めにという意識を持つことの重要性はより高まったと言えます。

なお、令和9年以降の相続において3年を超えて加算される贈与財産のうち100万円までは加算対象としない特別控除が設定されることになっております。

(2)相続時精算課税制度の見直し

その他、今回の大綱には、相続税・贈与税にかかる改正として、相続時精算課税制度の「使い勝手を向上させる」ための見直しが盛り込まれました。

相続時精算課税制度は、祖父母や親から子や孫が財産の贈与を受ける際に一定の贈与税を支払うものの、当該贈与財産を将来の相続税の計算に含め、算出された相続税額から過去に支払った贈与税額を控除するかたちで納税額を精算する(結果的に相続税の税率で負担する)ことを選択できる制度です。

大綱には、「現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする」と書かれており、相続時精算課税制度を選択した者にも暦年贈与と同様の110万円の非課税枠が別に認められることになると解せます。

この改正は今後の効果的な生前対策につながる可能性もあり、この先出される法案で制度の具体的内容を注視する必要があります。

(3) 一括贈与制度等の適用期限の延長

来年3月が適用期限とされていた教育資金の一括贈与制度は3年間、結婚・子育て資金の一括贈与制度は2年間、それぞれ一定の措置を講じた上で延長となります。(結婚・子育て資金の一括贈与については、次の適用期限の到来時に制度の廃止を含め改めて検討と、令和3年度から引き続いて「廃止」という文言が使われており、本当に令和7年3月末限りとなるかもしれません。)

同様に、来年12月が適用期限とされていた相続した自宅不動産を譲渡する場合に3000万円の特別控除を認める「空き家特例」も一定の措置を講じた上で4年間延長となります。

これらの制度に講じられた改正の内容も今後ご確認いただければと思います。


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