元請け・下請け・取引先とのトラブル
はじめに
日本の企業の抱える問題として、元請け・下請けの関係があります。
特に建設業や運送業で多いと思われますが、発注者・委託者から元請けが仕事の依頼を受け、それを下請けの会社に依頼し、さらに孫請けの会社に依頼するといった、多層的な請負構造がある業界もあるでしょう。
また、下請けや孫請けといった位置には、一人親方など会社ではなく個人事業者となっていることもあると思われます。
元請けの企業も下請けの企業も、どちらも独立した事業者ですので、雇用関係とは異なる、対等な取引関係にあるというのが建前です。
しかし、実際には、発注する側ということで、元請けの方が事実上の立場が強いこともあります。
逆に、人手不足など実際に仕事をする部門の需要が高まった際には、下請け、孫請けといった実際に仕事をする側の立場の方が強くなることも考えられます。
下請けとのトラブル
元請の立場で考えられるトラブルは、下請との間の契約の問題が考えられます。例えば、明確な契約書を作っていなかったので、どのような業務を依頼したのか不明確になることや、単価が明確になっておらず、想定よりも高い請負代金が請求される場合もあります。
建設業界では、明確な書面など取り交わされずに追加工事が行われることもあり得ますので、追加工事の依頼の有無、金額などを巡ってトラブルになることもあります。
元請けの企業は、発注者に対して、仕事を完遂する義務を負っていますので、仮に下請けの企業との間でトラブルになり、下請けの企業が仕事をしてくれない場合でも、元請けの企業が発注者に対して負っている義務は残ります。
このような場合には、元請けの企業の責任で、請け負った業務を行わなければならず、予想外の費用がかかってしまうこともあるでしょう。
元請けとのトラブル
下請けの立場から考えられるトラブルは、元請けから代金を支払ってもらえない等の問題が考えられます。
一般的には、発注する側の元請けの方が立場が強く、仕事をもらう側と考えられている下請けの方が立場が弱いと考えられます。ここでいう「立場」とは、交渉する際の交渉力を想定すると分かりやすいでしょう。立場が弱いと、値引きやその他の行為を求められた際に、断り切れないこともあります。
ただし、このような行為が必ずしも合法という訳ではありません。下請けの企業を守るために、いわゆる下請法(正式には下請代金支払遅延等防止法)という法律があり、企業規模によって、元請けの企業が下請けの企業に一定の行為を行うことが禁止されています。
その具体例としては、①下請けの企業の給付を受領した日から60日以内に代金を支払わなければならない、②正当な理由なく下請けの企業の給付を拒んではならない、③正当な理由なく下請け代金の減額をしてはならない、といったように、禁止される行為が挙げられていて、ある程度分かりやすくなっています。
取引先とのトラブル
企業の抱えるトラブルは、元請けの企業と下請けの企業の間の関係にとどまらず、取引関係にある企業間でもあります。
長年の取引がある企業同士でも、初めて取引をする企業同士でも、契約書を作らない場合があります。また、契約書を作らなくても、注文書・請書といった書面のやりとりがない場合も考えられます。
このような契約内容がはっきりしない場合には、言った、言わないという争いになり、水掛け論になってしまうこともあるでしょう。そのような場合を避けるためには、契約書などの書面をきちんと取り交わすことが必要です。
また、取引先から代金が支払われないといった問題もありますが、取引先の企業が倒産してしまえば、最終的には代金を受け取れずに終わってしまうこともあります。このような場合には、出来るだけ早く行動して、他社に先駆けて回収するしか方法がない場合もあります。
取引先との間のトラブルは、状況によって様々ですので、状況に応じて対応を検討する必要があるでしょう。