親族間のトラブル

1. はじめに

日本の企業数は、一説には約400万社ほどあると言われています。
このうち、一定数の休眠会社、ペーパーカンパニーといった動きのない企業やほぼ一人で運営されている個人事業とあまり変わらない会社があることを考えても、かなりの数の企業が日本には存在しています。

そして、この企業の大半は、上場していない非公開会社です。

上場企業とは、企業の株式が証券の取引所に上場され、取引所を通じて原則として誰でも売買できる企業のことを指します。
日本の上場企業数は、各地の証券取引所に重複して上場している会社もありますが、概ね4000社くらいあります。
そうしますと、日本の企業のうち、0.1%ほどが上場企業であり、99.9%は上場していない非公開会社ということになります。

非公開会社は、一般的には株式の流通性が少ない会社だと考えられています。

市場がありませんので、売る場合には、誰か買いたいという人や会社を見つける必要がありますし、株式の価値を決めることも容易ではありません。
そのため、非公開会社の株式は第三者に流通しにくいことから、非公開会社の株式を持っている人は、創業者やその親族が多いでしょう。

2. 会社支配権をめぐるトラブル

会社の株式を親族が持ち合っているような場合には、これに伴う会社支配権のトラブルが発生することがあります。

株式会社は、取締役の選任や報酬を決める場合に、原則として過半数の株式(会社の議決権)を持っていれば、ほぼ自由に取締役を誰にするか、報酬をいくらにするかといったことを決めることができます。

逆に言いますと、株式会社の株式をある程度持っていたとしても、株式数(議決権数)が半分未満でしたら、その会社から全くの利益を得られない可能性がある、ということになります。

金銭トラブル

3. 親族で株式を持ち合っている場合

親族で会社の株式を持ち合っている会社の場合、最初は創業者が全ての株式を持っていて、それが相続で段々と分散していったという経過をたどる会社もあります。

そのような会社では、株主の1人では誰も株式の過半数を持っておらず、何人かの株主が集まってやっと議決権の過半数が確保できるといった場合もあります。

このような問題は、相続が発生した際に生じることがあり、注意が必要です。

親族で会社の株式を持ち合っていた会社の社長が、子供を次期社長にした後で、元の社長が亡くなってしまった場合、新しい社長には求心力がないようなときには、クーデターのような形で結託した他の親族によって新しい社長が解任されてしまうかもしれません。

4. 創業者が株式のほぼ全てを持っている場合

また、創業者が株式の全て、又は過半数を持っているときも、注意が必要です。

例えば、創業者が長男を時期社長にした後で亡くなってしまった際に、株式を生前に名義変更しておらず、遺言書もないような場合には、株式が法定相続分で相続される可能性があります。

このような場合には、創業者の配偶者と二男その他の子が協力すれば、過半数の株式を取得して、新しい社長を解任することができてしまいます。

亡くなった場合ではなくても、同じように株式が分散してしまう場合があります。
非公開会社でも、業績がよく、資産がたくさんあれば、相続の際に株式の評価が高くなり、多額の相続税を支払わなくてはならない場合があります。

そのような場合に備えて、生前にたくさんの親族に分散して株式を贈与しておくという税金対策があります。

しかし、税金対策のために株式を分散させますと、議決権も分散してしまい、結果として議決権を集めた親族に会社を支配されてしまう可能性が出てきます。

5. まとめ

このように、非公開会社で、親族が株式を持ち合っているような会社は、出来る限り1人の株主が過半数の株式を取得していなければ、安定した会社運営が難しくなってくると思われます。

一度分散した株式は、再度集めることが容易ではありませんので、まずは株式を分散させないように注意することは肝心でしょう。

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