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テレワークと労働問題

弁護士 杉浦 恵一

 新型コロナウィルスが広がったことにより、官民で人との接触を少なくする新しい生活が推奨されています。例えば、飲食業、建設業、介護業、理美容業等の勤務場所以外では代替のできない仕事もありますので、仕事で人との接触を減らすことは難しい場合もあるでしょう。

 しかし、他方で、テレワークや交代勤務(隔日・隔週出勤)といった勤務方法で、できる限り人との接触を減らす勤務形態も模索されています。これまでオフィスに出勤していた会社が、急にテレワークといった新しい勤務形態に変更することは難しいかもしれませんが、新しい勤務形態が始まると、労働問題で新しい種類の問題も発生してくる可能性もあります

1. テレワークとは

 テレワークと一口にいっても、いくつかの形態が考えられます。

 自宅勤務であれば、自宅で業務を行うというものですので、通勤時間を削減することができますし、場合によっては職場の家賃を削減できる可能性もあります

 他の形態として、サテライトオフィス、シェアオフィスなど、自宅でも職場でもない場所を使って勤務する方法もあります。この場合も、場所によっては通勤時間の削減につながる可能性があります。

また、場所を定めず、モバイル機器を使用して、移動中を含めて様々な場所で勤務するという方法も考えられます。

 このようなテレワークをする場合、労働条件が同様であり、特に勤務場所の定めがなく、サテライトオフィスなどが著しく遠方でなければ、使用者には広い業務上の指揮命令権がありますので、同じ労働条件でのテレワークを命じることができると考えられます

 ただし、テレワークをする場合に、テレワークすることができるだけの設備があるかどうかが問題になります。例えば、自宅にパソコン・プリンターといった機器がない場合、ウェブ会議をする際のカメラやマイクがない場合、自宅で通信環境が整っていない場合など、職場環境が整備されているかの問題があります

サテライトオフィス、シェアオフィスを使用する場合、その使用料の問題も出てきます。

もともとの労働契約で決まっていない場合に、労働者に、一方的にこのようなテレワーク環境を整備するように命じることは、労働者に過大な費用負担を課すことになり、認められないことも考えられます。

そのため、テレワークを始める場合には、使用者に環境整備の費用負担が生じる可能性には、注意が必要でしょう

2. 労働時間の管理をどのようにするか

 在宅勤務などのテレワークの場合、まずはどのように出勤、退勤を確認するかの問題があります。

 職場に出勤する場合、タイムカードであったり、出退勤システムにログインするなど、職場での出退勤のシステムを整備している会社も多いでしょう。

 これに対して、例えば自宅で在宅勤務する場合には、出勤、つまりいつ勤務を開始し、いつ退勤、つまり勤務を終了したか分からなくなることも予想されます。

 このような場合、勤務開始の際に上司にメールなどの時間が残るもので連絡を行い、勤務終了の際にも同様の方法でメールを送るなど、何らかの方法で勤務時間を管理する必要が出てくるでしょう。

裁量労働制やみなし労働時間の規定を整備、運用することも考えられますが、要件が難しい場合もあり、後でこれらの制度の適用が否定される場合もありますので、注意が必要です

また、テレワークの場合、休憩時間や残業時間をどのように管理するかという問題もあります。

休憩時間とは、労働者が、労働時間の途中で、使用者の指揮命令・労働から完全に解放されている時間を指しますので、例えば在宅勤務で、電話やパソコンの前に待機することになっている場合、仕事のための待機時間として休憩時間ではないと判断される可能性もあります。

残業時間も、知らない間に延々と残業してしまう、残業されてしまう、といった事態が生じかねません。

このような場合には、残業は上司の事前許可制と定め、許可のない残業は認めないといった制度を厳しく運用する必要があるでしょう

3. 情報漏洩を防ぐことができるか

 テレワークを行った際に、会社の情報漏洩がないかも、問題点として出てくるのではないかと思われます

 職場であれば、物理的に情報を持ち出せなくさせることがあり得ます。

 しかし、テレワークの場合、書類その他の情報を職場外に持ち出さなければ仕事ができなかったり、周りに人がいなければ、パソコン等から情報を抜き出したり、パソコン画面などをこっそり写真に撮ったりすることが、職場に出勤している場合よりも、やりやすくなるでしょう。

 また、意図的な情報漏洩だけでなく、過失による情報漏洩を起こりやすくなります。職場外に情報を持ち出すということは、うっかりどこかに置き忘れたり、落としたりする機会が増えますので、そういった危険性が高まります

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テレワークを推進する場合、事前にその職場で起こりやすい問題点を洗い出し、事前に対応を考えておいた方がいいでしょう。

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