登録制度、権利侵害と救済方法
1. 登録制度
ここでは、登録制度について述べます。
日本において、著作権は、特に手続き等を経ることなく、要件を充たした著作物が作られた瞬間に、当然に発生します。したがって、登録は、著作権が成立するために必要なものというわけではありません。
ただ、登録は、著作権に関する事実関係を推定する効力(①)を有していたり、著作権の移転等権利変動があったことを、当該権利変動の当事者以外の人に対し、法的に有効な主張を行うために必要な条件(②)となっていたりします。この法的に有効な主張を「対抗」といいます。
登録の内容としては、以下のものが挙げられます。
- ・実名の登録(著作権法第75条)…①
- →この登録がされると、登録された者が著作者と推定されます。ここで、推定とは、著作権侵害の訴訟において、相手方が、登録者が著作者ではないとの反証に成功しない限り、登録者が著作者であることを裁判所が認めることが可能であることをいいます。
- ・第一発行年月日(著作権法第76条1項)…①
- →この登録にかかる年月日が最初の公表又は発行があった年月日であると推定されます。なお、この年月日は、著作権の存続期間に関係します。
- ・著作権の登録(著作権法第77条)…②
- →著作権の譲渡や質権の設定が登録されます。譲渡や質権設定の当事者以外の者に対しては、この登録がないと、その譲渡や質権設定を「対抗」できません。
2. 権利侵害と救済方法
⑴ 権利侵害
著作権侵害が認められるためには、以下の要件をみたすことが必要となります。
① 著作権が有効に存在していること
② 無権限の他人の利用行為があること
③ 著作物と同一または類似していること
④ 既存著作物へのアクセス (これは偶然の一致を著作権侵害から除く意味を持ちます。)
④の要件の立証に関しては、直接、アクセスした事実を立証することは困難です。そこで、実際の立証活動としては、類似の程度 や類似している部分の性質 (=アクセスしていなければ類似するはずのない部分が一致していること。EX誤字が一致している。)等を立証することによりアクセスを推認するという形になることが多いです。
⑵ 救済方法
⒜ 民事上の救済
著作権侵害が認められた場合、これを救済する民事上の救済方法としては、以下のものがあります。
- ㈠ 差止請求(著作権法第112条)
- 権利侵害行為を停止すること及び侵害するおそれがある行為をやめるよう求める請求のことです。なお、差止請求に付随して、侵害行為のために準備された機械・器具の廃棄も請求できます。
- ㈡ 損害賠償請求(民法第709条)
- 権利侵害行為によって生じた損害を賠償するよう求める請求のことです。ここで想定される損害は、権利侵害行為があったことによって、権利侵害行為がなければ権利者が得ていたであろう利益を得られなかったというものです。具体例としては、著作物を第三者が勝手に売却したため、権利者がその売却を行えず、それによる利益を得られなかった場合が挙げられます。なお、このような利益額の具体的計算は、権利者側が行わねばなりません。ただ、この計算はとても困難なので、損害額の推定規定が存在します(著作権法114条)。これらの規定によって、権利者は自ら計算ができなくとも、法に従った最低限の損害を請求することが可能になっています。
- ㈢ 不当利得返還請求(民法第703条704条)
- 上記の他にも、民法上の不当利得返還請求を行うという方法も考えられます。
- ㈣ 名誉回復等の措置(著作権法第115条)
- 著作者人格権を侵害された場合には、それにより毀損された名誉を回復するための方法として謝罪広告等の請求も可能です。
⒝ 刑事罰
上記の民事上の救済の他にも、著作権侵害者には、刑事罰が科されるがあります。量刑は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金です(著作権法第119条)。また、法人の従業者が著作権侵害を行った場合には、当該法人に最高3億円の罰金が科され得ます(著作権法第124条1項)。これらの刑事罰が科されるためには、被害者としての著作権者等からの告訴という処罰を求める手続きが必要となります(著作権法第123条1項)。
これらの刑事罰が科されるためには、被害者としての著作権者等からの告訴という処罰を求める手続きが必要となります(著作権法第123条1項)。