株主総会が開催されない場合の対処法
株式会社の中には、複数人で出資されて株主が多数になっている場合や、相続等により株式が分散している同族会社(親族で株式を持ち合っている会社)もあると思われます。
このような株式会社の場合には、株主総会が開かれておらず、特定の取締役が一部の株主の意向に反する経営をしている場合や、財務状況・経営状況を教えてくれなかったり、資料を開示してくれないという場合もあるかもしれません。
このような場合に、取締役になっていない株主や代表権のない取締役になっている株主は、何もすることができないのでしょうか。
株主総会を開くことができれば、役員を改選したり、役員を解任し、新しい取締役を選任し、そちらに改めて経営してもらうことが可能です。
しかし、取締役には任期があるものの、株主総会が開かれなければ任期が過ぎても、そのまま取締役としての権利義務が残った状態になってしまいます。
会社法では346条1項で、「役員(中略)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。」と定められています。
何らかの理由で役員に欠員が生じた場合でも、新しい役員を選ぶまでは前の役員は会社を経営する責任があるということです。
これは株式会社の経営の継続性・持続性を確保し、取引先等に迷惑をかけないようにするためのものではありますが、このような条文、制度を逆手にとり、株主総会を開かないことで延々と役員としての権利義務を持ち続けられる結果となる場合もあります。
株主総会の招集を請求する権利
このような場合でも、一定の要件を満たす株主には、株主総会を開催するように求める権利があります。
会社法297条1項では、「総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。」と定めています。
つまり3パーセント以上の議決権に相当する株式を所有していれば、取締役に対して株主総会を開くことを求めることができます。
この請求をする場合には、念のため内容証明郵便で送り、かつ配達証明により配達されたことが分かるようにしておくといいでしょう。
取締役が応じない場合の手続き
では、このような株主総会の招集・開催を請求しても、その取締役が応じない場合にはどのようにしたらいいのでしょうか。
そのような請求があったにもかかわらず株主総会が招集・開催されない場合に備えて、会社法の297条4項では、以下のように定め、株主が株主総会を招集できるように定めています。
「次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
- 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
- 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
そのため、請求を受けた取締役・会社が株主総会を招集しなければ、株主が裁判所の許可を得て株主総会を招集することができますので、まずは裁判所に株主総会の招集の許可を申し立てる必要が出てきます。
この際に、取締役に対して送った株主総会招集の請求書類が証拠になりますので、きちんと保管しておくといいでしょう。
おわりに
裁判所が招集を許可した場合には、許可を受けた株主が株主総会を招集することになります。 株主総会の議長は代表取締役が務めると定款で定められている例も多いとは思いますが、このように裁判所の許可により招集された株主総会では、そのような定款の適用はないと解釈されておりますので、招集許可を得た株主が議長になることが多いとは思われます。
このような手続きにより、株主総会が開かれなくても株主が開くことが可能となります。
ただし、あくまで株主総会を開くだけですので、議題・議案の審議は株主の多数決により決める必要があります。そのため、株主が分散している株式会社では、事前に他の株主に説明等をして、過半数の議決権をとることができるように事前説明などをしておくことが必要でしょう。