セクハラ対策は義務
平成11年度の改正男女雇用機会均等法によって、事業主にはセクハラ防止措置を講じる義務が課せられました。防止措置とは、労働者からの相談に応じる体制の整備、適切に対応する体制の整備、その他の必要な措置をいい、具体的には以下のようなものが考えられます。
1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(1)職場におけるセクハラの内容・職場におけるセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2)セクハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
2. 相談(苦情含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(1)相談窓口をあらかじめ定めること。
(2)相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また広く相談に対応すること。
3. 事後の迅速かつ適切な対応
(1)事実関係を迅速かつ正確に確認すること
(2)事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
(3)再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も同様)
4. 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
(1)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
(2)相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
上記防止措置は、企業の規模や職場の状況の如何を問わず、必ず講じなければなりません。
これらは、安心して仕事に取り組める環境を整え、生産性を向上させるためにも重要です。もし、適切な防止措置を講じておらず、是正措置を受けても改善が見られない場合には、厚生労働大臣により企業名を公表される場合もありますので、注意が必要です。
専門家に相談しましょう
以上のとおり、企業にはセクハラを防止する措置を講じることと、セクハラの申告があった場合には、迅速かつ適切に対処することが求められます。これを怠ってセクハラ問題に関する訴訟を提起されてしまった場合は、会社の怠慢な対応が世間に公表されることになり、内外ともに会社の信用を失うことにもなりかねません。
「セクハラかどうか」「どう対処すべきか」といった判断が難しい場合には、早めに弁護士に相談し、具体的な事案に即したアドバイスをしたがって対処することが重要であるといえます。後で取り返しのつかないことにならないためにも、問題の種が小さいうちに弁護士に相談しましょう。
弁護士(法律事務所)を外部相談窓口として活用する
企業の方に是非お勧めしたいのは、御社内部ではなく、弁護士(法律事務所)をセクハラ等の相談窓口として定め、社員の方々に周知しておくという方法です。
この方法には、以下のようなメリットがあります。
- 相談担当者がその道のプロであることから、内容や状況に応じ、適切に対応できること。
- セクハラ問題の相談担当者の育成が不要であり、必要な人材を確保できること。
- 相談者にとっても、外部の専門家に対する相談であることから、相談しやすいこと。
外部相談窓口の設置に対しては、世間に会社の問題が発覚するという懸念が考えられます。しかし、それは杞憂です。
新聞等で取りざたされているセクハラ問題の多くは、社員からマスメディアに対する直接の内部告発によるものです。そして、社員が内部告発を行う理由は、「会社に対しては相談しづらい」若しくは「相談しても不適切 な対応をされた」ことによるものです。弁護士を外部相談窓口として設置した場合、「相談しやすく」かつ「適切な対応」が可能です。したがって、世間に御社のセクハラ問題が発覚する可能性は低いといえます。