前回のメールマガジンに引き続き、契約書作成のメリットについてご説明いたします。
契約書作成の2つ目のメリットは、
【契約内容の適正性に関する事前判断ができる】点だと思います。
これだけですと「???」
だと思いますので、具体的にご説明したいと思います。
契約を締結する際、契約当事者は、
契約の内容を自由に定めることができます。
しかし、「自由に定められる」といっても限界はあり、
法令(強行法規)や判例等に違反するような内容は定められません。
例えば「●●さんを殺してほしい」との殺人委任契約が
無効であることは、容易に想像がつくと思います。
殺人委任契約のような極端な例であれば分かりやすいと思いますが、
線引きが難しいケースも当然出てきます。
それでは、次のような定めは有効といえるでしょうか?
クリーニング屋のフランチャイズで、
契約期間は2年とされていたが、その契約書の中で、
『加盟店がフランチャイズ組織から中途脱退する場合、
「加盟店は本部に対して500万円を下限とした解約一時金を
支払わなければならない。但し、役員会の決議により
これを免除できる」と定められている』
あなたは、上記合意が有効だと思いますか、それとも無効だと思いますか。
加盟店側からみると、高額な解約金を支払わないと
中途脱退できないのは不当といえますが、
他方、フランチャイズ組織からすると、経営ノウハウの伝達や
具体的な指導をしてきた以上、途中で脱退されるのは困ります。
しかも、解約一時金を支払わないといけないのは
2年間の間に辞める場合に限られております。
上記ケースが争われた事案で、裁判所は、
独占禁止法違反(優越的地位の濫用)等を理由に、
上記合意が無効である旨判断しました(浦和地裁平成6年4月28日)。
このように、契約条項が無効となると、
企業は期待していた利益を得られなくなる可能性があるばかりか、
損害賠償の請求を受ける可能性すらあります。
また、損害賠償請求を受けないまでも、不適切な契約条項は、
当該企業のイメージ低下にもつながりかねません。
(レピュテーションリスクの問題)
一度失った信頼を取り戻すには、
これまでの何倍もの努力と期間を要するでしょう。
このような失敗を防ぐためにも、【合意内容の適正性】は
事前に検討するべきです。
そして、検討するためのきっかけとして、
契約書を作成することはとても有意義なものだといえます。