今回は、正社員の解雇がいかにハードルが高いかを物語る判例から、精神的に病んでいる従業員に対し、適切に対応する重要さを学びましょう。
今回は、正社員の解雇がいかにハードルが高いかを物語る判例から、精神的に病んでいる従業員に対し、適切に対応する重要さを学びましょう。
日本ヒューレッド・パッカード株式会社(以下H社という)において、Xはシステムエンジニアとして、入社後約7年半はとりわけ問題なく勤務を続けていました。
しかし、ある日、上司に対し、
その間、Xは有給休暇を使い切り、さらにその後40日間、
H社はそのことを理由に、諭旨解雇(退職金はあり)
①会社における従業員としての地位確認
②平成20年10月末日から毎月月額40万8059円の月額給与、同年12月から毎年6月10日、12月10日限り金100万円の賞与の支払い、それぞれ年6分の割合による遅延損害金の支払い
を求めて、裁判を起こしました。
解雇までの詳細な経緯は・・・
被害事実を調査する為、有給休暇を取得し出勤しなくなる。
有給が残り少なくなったため、上司のAに対し休職の特例を認めてもらえるよう依頼。
H社は、休職は許可できないと回答。
H社の調査窓口となった人事統括本部労務担当部長Bに、調査を依頼すると共に、特例の休暇を認めるよう再依頼。
B部長は、Xが提出したICレコーダーのデータからは、被害事実が認められないと回答。
Xは有給がなくなったため、社会貢献休暇を取得する旨を申告。
しかし、欠勤する正当な理由が認められない為、
人事統括本部長Cは、
Xは出社を始める。
賞罰委員会が開かれ、C本部長は、Xに対し、9月30日をもって諭旨退職処分にする旨を通告。
第一審は、Xが欠勤にあたり就業規則所定の手続きを取っていない事から、H社の懲戒事由「正当な理由なしに無断欠勤が引き続き14日以上に及ぶとき」 にあたるとし、棄却しました(東京地裁 平22.6.11判決)。
しかし、第二審、東京高裁では逆転勝訴の判決がでました(東京高裁 平23.1.26)。
H社は上告しましたが、
(最高裁 平24.4.27 第二小法廷判決)。
Xが主張した嫌がらせとは・・・
メイド喫茶のウェイトレスとの間でトラブルになった事がきっかけで、同僚から、男女関係のいざこざをほのめかす言葉をかけられるようになりました。
そのため、何者かにストーキングされ、身辺情報がインターネットの掲示板やSNSを通じて流され、それを同僚らが共有していると考えるようになりました。
そうした被害事実は、Xの精神的不調による被害妄想としたうえで、本人に病気の意識がなく、欠勤を事前に届けられなかった為、無断欠勤にはあたらないとしました。
また、H社は欠勤が続けば懲戒解雇になる等の警告をしていなかった為、解雇は無効としました。
本人に精神的な病気の意識がないため、無断欠勤にはならない。
Xは被害妄想など何らかの精神的な不調を抱え込み、
Xが欠勤したのは、そうした精神的不調に基づいていますが、病気の自覚がないため、
よって、H社の就業規則上の「
また、上司に対し休職の特例を認めるように依頼したり、休職の申請方法について尋ねていますので、「適宜の方法で欠勤の旨を所属長に連絡」
判旨は、明確です。
「精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想される
・・・ところであるから、
・・・Xの出勤しない理由が存在しない事実に基づくものであることから直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして、論旨退職の懲戒処分の措置を執ることは精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難い。」
Xが自ら病気であると申告していないにも関わらず、H社は理解し、Xの精神的安全に配慮を示さなければならなかったのです。
Xが精神的におかしいと疑いを抱くことは可能だったのですから、H社の就業規則で設けられている、
就業規則に規定が有る無しに関わらず、休職の適応が求められる。
本件判旨は、「私傷病を理由として解雇することが出来るか」という問題に重要な指針を、新たな法規範(判例法)として呈示しました。
これまでは、
と解されてきました。
しかしながら、長期勤続制度の下では、病気で一時的に労務の提供ができないということだけを理由とした解雇は相当でないので、「身体の著しい故障のために長期間にわたって業務に堪えないとき」にはじめて解雇事由該当性が生じる、と限定的に解釈されるようになりました。
本件判旨は、
これは、就業規則に、
もちろん、休職期間中の給与については、
そして、
休職期間満了時に別途解雇する場合には、期間中解雇を猶予したことにより、
はじめから諭旨退職ありきの、切り離しだった?
Xは、本件解雇後、
同委員長である中里好考氏は、本件について、
「相当いい加減なやり方で、強引に解雇した印象」
「会社の真の意図は、もうX氏はいらない、
などとコメントしています。
本件では、欠勤の終了数日前まで懲戒処分の可能性を告知していなかったことも問題です。
解雇などの不利益を課す場合には、
あまりにもみっともない内容です。
大企業の人事労務担当者が粘り強く改善に向けた対応を重ねたとは言い難く、本来取るべきだった手続き、「産業医の診断⇒休職」 を回避せざるを得ない上層部の力が働いたのかもしれません。
こんにちは。 弁護士の杉浦 恵一です。
今回は、思わぬ費用を請求される可能性があるインターネット上のイラストの転載についてご説明します。
まず、イラストに限らず、著作物には著作権があります。
著作権というのは、特許権と異なり、登録しなくても、著作物を作成した瞬間に著作物に対して発生します。
この点で、著作権は登録の制度がありませんので、実際には誰の著作物か分かりにくいという点があります。
また、著作物には必ず著作者がいます。
猫がタイプライターを踏みつけて偶然小説が出来上がったとか、波打ち際で、偶然波が砂を動かして絵が描かれた、といった場合でもなければ、イラストには著作権者がいることになります。
従いまして、インターネット上のイラストを転載する場合には、そのイラストは著作物です。
よほど著作権を主張しないというイラスト(俗に著作権フリーというようです)ということがはっきりしない限りは、自社のホームページに余所から持ってきたイラストを使うことは止めた方がいいでしょう。
では、仮に著作権のあるイラストを自社のホームページに使用し、それが著作権者に見つかってしまった場合、どの程度の金額が請求されるのでしょうか。
著作権の使用料は明確な基準がないため、その著作権者がいくらの値を付けているかによります。
金額の推定規定もありますが、どうしてもどんぶり勘定になってしまいがちです。
ただし、世の中には著作権管理会社があり、様々な著作物を一定の価格で頒布することを業としています。
このような会社が管理する著作物は、使用目的や試用期間、
そして、ホームページの場合、1サイトではなく、1ページにつきいくらという価格設定も多くありますので、そのような価格設定をされているイラストを、自社のホームページの全てのページに使ってしまっていたら、膨大な金額を請求されかねない危険性があります。
皆様、
当事務所のご相談受付はこちらです。お気軽にお問合せ下さい。
⇒ ご相談のご予約 052-231-2601
または、メールフォームからお願いいたします。
弁護士法人名古屋総合法律事務所および税理士法人名古屋総合パートナーズはともに経営革新等支援機関に認定されています。
名古屋総合リーガルグループでは、中小・中堅企業の実情も十分考慮した上で、企業が抱える労務問題、取引先や顧客からのクレーム・トラブル、著作権侵害などのリスクから会社を守る方法を提案しています。
残業代やセクハラ、解雇やうつ病などの労務問題に頭を抱えていらっしゃる経営者様も多いと思います。
多くの問題は、法律の知識をもって対策をしておくことで未然に予防することができます。
顧問契約等の制度を利用していただければ、わざわざ来所していただかなくても電話やメールで気軽に相談していただくことができます。
ぜひ下記からお気軽にご連絡下さい。
▼法人様向けホームページはこちら
https://www.nagoyasogo-kigyo.com/
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最近、テレビを見ても、新聞を読んでいても、目にする内容は「増税」に関することばかりです。
5%から8%になると決まってから「計算が面倒になるなあ」と、のんきなことしか考えず、気にしていませんでした。
しかし、最近、車の購入を検討するようになって(名古屋で就職して早2年、そろそろほしいなと思いまして)、初めて事の重大さに気づきました!
仮に100万円の車を買うと3万円も余分に払う必要があるのです
100万円に気がとられて大したことないなと車屋では思いました
こうなってくると、「そろそろ布団をやめてベッドを買おうか」
急にはすべて買えませんし、
増税後の方がお得になるという解説者もいて、
今月には決着をつけようと思います!
みなさんは、どうされますか? (中野)