本号の内容
- 任期途中での取締役の報酬額の変更は難しい
- 編集後記
■任期途中での取締役の報酬額の変更は難しい
会社の株式の大半を所有する大株主兼取締役が、経営方針を巡り、他の取締役と対立した場合、まずは議論を重ね、合意を形成する努力をするべきでしょう。
しかし、議論で合意が形成できない場合、大株主兼取締役は、対立する取締役の任期満了時に、株主総会において、再任しないことが、当然できます。
任期満了まで待てない時には、大株主兼取締役は株主総会において、対立する取締役を、解任することができます。
ただ、この場合、解任された取締役から、解任に正当な理由がないとして、残存任期期間中と、任期満了時に得られたはずの報酬相当額の支払いの請求をされる可能性があります(会社法339条2項)。
では、大株主兼取締役としては、解任するのではなく、報酬を大幅に減額することによって、対する取締役を辞めるよう促すことが考えられますが、果たしてそのようなことが可能なのでしょうか?
最高裁の判決は?
最高裁平成4年12月18日第二小法廷判決は、この点について、
「定款や株主総会決議(株主総会決議において取締役報酬の総額を定め、取締役会において各取締役に対する配分を決議した場合も含む)によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、
その報酬額は、会社と取締役の双方を拘束するから、その後、株主総会が当該取締役の報酬につき、これを無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに同意しない限り、右報酬の請求権を失うものではない、と解するのが相当である。」
と判示しました。
すなわち、一度、株主総会等で取締役の報酬額を定め、それに取締役が同意して取締役に就任した以上、その報酬額が会社と取締役との委任契約内容となるため、会社から一方的に報酬額を減額することはできないということです。
したがって、大株主兼取締役は、対立する取締役の報酬額を一方的に減額することで辞めるよう促すことは、事実上できないということです。
職務内容を責任の低いものへ変更したら?
大株主兼取締役が、対立する取締役に対し、職務内容を責任の低いものへ変更した場合、どうでしょうか。
例えば、「常勤取締役」から「非常勤取締役」へ変更した場合、それに伴う報酬額の減額は可能なのでしょうか。
もちろん、職務内容に変更について、当該取締役の同意がある、あるいは、同意がなくても、当該取締役が病気や能力不足等で職務内容の変更に、「正当な理由」があるときには、任期途中の報酬額の変更も許されるでしょう。
学説の多数もそのように考えています。
しかし、職務内容ごとの報酬基準に関する明示がある、または、黙示の取り決めがあっても、職務内容の変更に当該取締役の同意がなく、かつ、「正当な理由」がない場合は、職務内容の変更という名目で、一方的に報酬の減額が行われる可能性を否定できないため、報酬の減額は許されないという見解が有力です。
まとめ
任期途中で対立する取締役を解任した場合に、
- 残存任期期間中の報酬相当額を支払わなくてはならないのか
- 職務内容の変更に伴い報酬額を減額することができるのか
の判断においては、「正当な理由」の有無が争われることが多いです。
したがって、細かい法的分析が必要となります。。
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編集後記
気候が暖かくなって春めいてきましたね。
新しい季節とともに、自分も心機一転、気持ちをすっかり良い方向に向けたい気分です。
夏の日照時間が長い欧州や米国などでは、3月末から「サマータイム」が始まるそうです。
春から秋までの7~8ヶ月にわたる長い期間なのに、どうして「サマータイム」というのでしょうか。
桜の開花時期の名古屋に住まう私としては、今の時期から「サマータイム」と言われますと、趣きに欠けるような気がいたします。
調べたところ、米国では「デイライト・セービング・タイム」と言うそうです。
個人的にはこちらの方が意味としては、しっくりきます。
日本では、制度について議論されたり、一部では実験的に実施されているそうです。
もし、この制度が日本で導入される時には、風情ある名称になるといいなと思います。