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2021年12月20日
税理士法人名古屋総合パートナーズ
今月10日、政府与党より令和4年度税制改正大綱が公表されました。
ここ数年の大綱の基本的考え方の中で、「相続税と贈与税をより一体的に捉える」、「相続税精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」といった方針が示されていたことから、贈与税の控除額(非課税枠)の引下げなどの大きな改正があるのでは、といった予測も出されていましたが、今年度の大綱では相続税・贈与税に関する大幅な改正事項は盛り込まれませんでした。
ただ、今年度の大綱の基本的考え方の中でも上述の方針が引き続き記載された上で、「贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある」とも明示され、生前贈与にかかる制度改正への姿勢はより強く示された感があります。
また、贈与税と同様に議論がなされていた金融所得課税の強化につきましても、大幅な改正は先送りされた模様です。ともに個人財産の管理に影響のある事項であり、次年度以降の改正動向を引き続き注視する必要があります。
今回の税制改正の中で個人の生活に関わる大きな改正としては、いわゆる住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)の見直しが挙げられます。
住宅ローン減税とは個人が住宅を購入する際にローンを組んだ場合、そのローンの年末時点の残高の1%相当額を、その年の所得税額から控除する制度です。
1年目は確定申告書の作成と提出が必要となりますが、2年目以降は勤務先で行われる年末調整手続きの中で控除を受けられるため、減税幅も大きい上に会社勤めの方にとって手続きが容易であり、多くの方に恩恵をもたらしている減税措置となっています。
ただ、近年の低金利政策の影響で住宅ローン利率が1%を切るレベルまで下がっているため、支払う利息よりも恩恵を受ける減税幅の方が大きくなるという言わば「逆ざや」のような状況が生じてしまっており、これが数年前より問題視されておりました。
これに対応するため、来年以降住宅を取得し居住を開始した場合の控除率が、1%から0.7%に引き下げられることになりました。
控除期間は原則10年である現行制度から13年に延びることとなり、この点は改善なのですが、適用対象者の所得要件が現行の3000万円以下から2000万円以下に、借入残高の限度額も現行の4000万円から3000万円にそれぞれ引き下げられることもあり、全体としては縮小方向の改正と言えそうです。
また、法人課税の面では、積極的な賃上げを促すべく、いわゆる賃上げ税制の拡充が図られます。
本制度は、大企業と中小企業で内容が若干異なりますが、企業が前年度より給与額を増加させた場合に、その増加額の一定割合を法人税から控除できるという仕組みで、ここ数年の改正でも適用の簡便化が図られて来ました。
具体的には、まず大企業については、現行制度(人材確保等促進税制)では新規雇用者の給与支給額が前年度より2%以上増加していれば、その増加分の15%を法人税から控除できることになっておりますが、今回の改正で、新規雇用者でなく前年度より継続して雇用されている者を対象にして前年度との比較を行うよう変更され、その給与額が3%以上増加していれば、控除対象雇用者全体の給与増加額の15%を税額控除できるようになります。
また、増加割合が4%以上であれば控除率を10%加算、一定の教育訓練費の増加が見られれば控除率をさらに5%加算と、控除率は最大30%となるよう拡充されております。
一方、中小企業については、現行制度(所得拡大促進税制)では雇用者全体の給与支給額が前年度と比較して1.5%以上増加していれば、控除対象雇用者全体の給与増加額の15%を法人税から控除できることになっておりますが、今回の改正でこれに対する上乗せ措置が拡充され、雇用者全体の給与支給額の対前年度増加割合が2.5%以上であれば控除率に15%を加算でき、一定の教育訓練費の増加が見られれば控除率をさらに10%加算できるようになります。
これにより中小企業では最大40%の税額控除を受けることが可能となります。
その他、商業地における固定資産税の負担軽減措置の延長、消費税インボイス制度導入に向けた免税事業者の登録手続きの見直しなどが今回の大綱に盛り込まれています。
年明けの国会での法案審議の中で改正内容がより具体的にされますので、特に関わりのある事項につきましては引き続きご注視ください。
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