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2021年11月08日
名古屋総合法律事務所
弁護士 杉浦 恵一
2021年9月27日の報道で、新型コロナウイルスが不可抗力の原因となり、キャンセルに解約料が不要か、解約料を支払う必要があるのか、という問題に関する判決が、東京地方裁判所で出されたようです。
報道で説明されている事案・事実経過は、2020年の3月に、東京都内の結婚式場で結婚式を行う予定だった原告が、新型コロナウイルスの感染状況を考慮して結婚式を行うことをキャンセルし、それによって生じた解約料に関して、結婚式場側に解約料の返金を求めて提訴したということでした。
日本でも、いずれは新型コロナウイルスのワクチンを接種しないことによる不利益が生じたり、逆にワクチンを接種することによる利益が出てきたりする可能性があります。
原告は、新型コロナウイルスのまん延が、天災などで結婚式を行うことができない場合に費用の全額が返金される不可抗力に該当するとして、解約料の返金を求めているということでした。
そのため、争点としては、新型コロナウイルスのまん延ということが、不可抗力に該当するかどうかということになりそうです。
報道で見る限り、東京地方裁判所の判決では、キャンセルを申し込んだ2020年3月25日当時について、
緊急事態宣言が発出されていなかったこと、その後に出された休業要請の対象に結婚式場が含まれていなかったこと、式場の天井の高さや式場側が行っていた感染防止対策からすると東京都が避けるように要請していた3密の状態に当たるような場所ではなかったこと等を指摘し、
結婚式を行うことが不可能であったとまでは認められないと判断し、原告の解約料返還請求を認めなかったようです。
この裁判が、控訴されて高等裁判所で改めて判断されるかどうかまでは、現時点では分かりませんが、新型コロナウイルスがまん延した影響がこのようなところまで出てきていることが分かります。
例えば民法では、明確に不可抗力と明示している部分はありませんが、民法415条では、
「債務者がその本旨に従った履行をしたいとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない。」とされています。
そのため、債務の発生原因や取引上の社会通念に照らして債務者に責任がなければ、賠償責任は負わないのですが、社会通念など結局は明確ではないと言えます。
これまでの不可抗力は、戦争や天変地異(台風や地震など)のように、人の力では変えることができず、又は防ぐことができないような大きな出来事のことを指すことが一般的です。
契約書では不可抗力に関する条項を入れ、不可抗力の内容をより明確化、又は広げることもありますが、今回報道された裁判では、新型コロナウイルスのまん延がこのような不可抗力に当たるかどうかが問題とされています。
例えば、季節性のインフルエンザであれば、それにかかったら自己責任だと考え、不可抗力に当たると考える人は少ないのではないかと思われます。
現在では、新型コロナウイルスの影響、性質が以前に比べて分かるようになってきましたが、2020年の流行初期のように情報がない場合に新型コロナウイルスに適切に対処できたかどうかは、何とも言えない部分もあったでしょう。
新型コロナウイルスの影響を受けた取引上の問題は、これから本格化してくる可能性もありますので、注意が必要ではないかと考えられます。
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