VOL.1 2013/12/05 【問題社員へ対応する際のポイント!~新入社員が勤務5日で退職~】
本号の内容
問題社員への対応における留意点
弁護士 浅野了一
2013年10月8日、愛知県経営者協会にて、社会保険労務士 浅野貴之氏(アライツ社労士事務所)による「問題社員対応セミナー」を受講しました。
講義の最初に挙げられた質問は、、、
「社員が、入社し5日勤務した後、急に出社しなくなりました。
連絡も取れず心配していたら、数日後に、電話一本で一方的に退職するという。
しかも、既往労働5日分の賃金を請求。
どうも別の就職先を探していたようです。」
人事労務でよくある問題です。
社会常識では、考えられないような問題に人事労務担当者はよく直面します。
講義の中で、紹介されました問題社員への対応の基本はこちらです。
- 問題社員の対処法は、最初に「目標」「落とし所」を決める。
- 法律的処置ばかりでなく、「教育」「話し合い」に重点を置く。
- 「力技」を行使する時は、リスクも考える。
- 最低限の「予防」(組織防衛)は行っておく。
- 可能な限り「解雇」は防ぐ。
お金と時間をかけて採用活動を行い、
これから頑張ってもらおうと思っていた矢先の退職願い。
会社にとって、とても大きなダメージです。
新入社員ですから、認識の違いを埋める話し合いを持ち、
自社でいかに成長できるか説得したいところですが、
今回のケースでは、既に転職する意思が固まっているため、難しいでしょう。
では、退社を選択した場合、どう対処すればよいのか、
弁護士の立場から、解説いたします。
- A案
退職届の提出を求め、5日間の勤務でも社会保険加入手続をして、
5日間分の給料と1ヶ月分の社会保険料の精算をして、残金があれば支払う。
不足が生じれば請求する。
- B案
退職届および、社会保険に加入を希望しない旨の書面を提出させて、
5日分の給料を支払う。
- C案
退職届の提出を求め、また、5日分の給料の支払を拒否して、
急に出社せず一方的に退職したことによって生じた会社の損害賠償を請求する。
- D案
電話での一方的な退職の申し出の旨を認めず、解雇もしくは懲戒解雇にする。
など、色々な対応が考えられます。
さらに、退職届の提出を拒否された場合は、どうするかという問題もあります。
退職自由の原則
~期間を定めている雇用契約では、原則いつでも解約でき、
労働者の退職申入れ後、2週間を経過することによって
雇用契約が終了します(民法627条1項)。~
就業規則に、「退職に際しては、書面にて退職届を提出しなければならない」と
定められていても、労働者の自由な意思表示により退職の意向が伝えられている場合、
口頭による退職申し出を有効として扱わざるを得ません。
なお、この場合、退職の意思表示を撤回されるなど、後々のトラブルを避けるために内容証明郵便などで退職の申し出を承認した旨の記録を残しておくようにします。
原則的には、法的安定性の高いA案で退職処理をして、他の業務にあたるのが
コストと業務の効率を考えれば、相当であると思います。
退職自由が原則である以上、C案は請求が認められにくく、D案も解雇が有効か懲戒事由があるかといった検討やリスクを考えると、現実的ではありません。
編集後記
11月初めの3連休に、甥が1歳の誕生日を迎えたので、
大阪までお祝いしに行ってきました。
最近は「いやいや」と「あーと(ありがとう)」を覚えて、それを披露してくれました。
指差し行動もするようになり、私を見ては珍しいのか指を差して、にたにた笑っていました。
その光景にとても癒され、最近の激務からの疲れが少し緩和されたように思います。
今度はお正月に実家で遊べることを楽しみにして、
今年もあと残り1カ月、頑張りたいと思います。 (中)
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