後継者がいない企業・事業承継
近時では高齢化や少子化に伴い、後継者がいない企業の問題・事業承継の問題が取り上げられることが多くなってきました。これまでは創業者の子供、孫など血縁者が会社の事業承継をすることが多かったと思われますが、同業他社や第三者に会社の株式や事業を譲渡し、事業承継をするケースも増えてきているようです。
近年では、M&Aの仲介会社が株式市場に上場するほど、事業承継の経済市場は大きくなってきているようです。
中小企業庁による2024年版の中小企業白書によれば、中小企業における後継者不在率は、2011年には約65パーセントであったところ、2023年には約54パーセントと、やや減少傾向にあるようです。
この理由が後継者不足の解消によるものか、または近年ありました新型コロナウイルスの蔓延によって相当数の企業が廃業したことによるものか、はっきりはしませんが、それでも未だに50パーセント以上の中小企業では後継者が不在となっており、後継者不足や事業承継の問題は、中小企業において大きな問題になっていることに変わりありません。
事業承継が進まない問題
このような経過からすると、最初からその会社にある資金を吸い上げる目的で株式譲渡、事業譲渡を行い、資金を移転させたら他の約束は果たさずに行方不明になる目的ではなかったかが疑われます。
株式会社の制度は、株主のリスクが限定されており、株主は原則として出資の範囲でしか責任を負いません。そのため、株式の譲渡を受けて会社を買収したとしても、買収した会社が買収された会社にもともとあった借金を当然に引き継ぐわけではありません。
このような株式会社による株主リスクの限定化が悪用される可能性がありますので、事業譲渡をする際には、事業譲渡先の会社が信用できる会社なのか、よく確認することが必要でしょう。
信用性の確認
公開されている情報からある程度の信用性を確認することは可能です。
例えば、会社の登記簿謄本(登記事項証明書)を取り寄せれば、その会社の設立年月日や役員構成、役員の就任時期、本店の場所などが分かります。
設立して間もない会社であれば、歴史が浅く信用性が低いということも考えられますし、設立年が古くても、長期間休眠していた会社を使っているだけということも考えられます。
本店が頻繁に移転している会社や、役員の辞任などの改選が頻繁にある会社も、信用性が高いとは言えないでしょう。
また、本店所在地や営業所を地図で確認する等して、実際にその場所で営業がなされているかなども確認した方がいいでしょう。
さいごに
昨今の後継者不足により、M&A市場が拡大し、一定の市場規模を有しているようですが、このような悪質な資金吸い上げを目的としたM&Aの可能性もあることから、注意が必要でしょう。
従業員や取引先のためと思って株式を譲ったばかりに、かえって会社の破綻を招き、借金だけが残ってしまうという結末もあり得てしまいます。