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業務委託と源泉徴収

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近年、企業の個人との間の契約形態も多様化してきました。

かつては雇用契約を交わし正社員として業務に従事してもらうという形態が普通でしたが、雇用形態もパート勤務や派遣労働といったいわゆる非正規雇用が多くの比率を占めるようなり、最近では業務委託(請負)というかたちで企業が個人に業務を依頼する形態も珍しいことではなくなりました。

業務委託のメリット・デメリット

業務委託という形態は、

・委託する個人に業務を行う時間等の具体的な指示ができないこと

・業務上の技術やノウハウが企業内に蓄積されない

といっったデメリットもありますが、従業員ではないため、

・労働基準法を始めとする労働法規の適用を原則として考慮する必要がない

・社会保険・労働保険の企業負担がないこと

などの企業側のメリットも大きく、今後増加が見込まれる形態であると言えます。

企業側が専らこのメリットを享受するだけの目的で業務委託を行ういわゆる「偽装請負」の問題(形式的には請負契約であるが実態は労働契約)も現実に生じており、運用面で解決すべき問題は多々あるようです。今回はこれを認識しつつ、この業務委託の報酬支払い時における源泉徴収についてお話ししたいと思います。

業務委託における源泉徴収

従業員に支給する給与と異なり、個人に業務委託の対価として報酬を支払う際に常に源泉徴収が必要となる訳ではありません。所得税法(204条)および所得税基本通達(204-1~34)に源泉徴収の対象となる旨定められている報酬についてのみ必要となります。

原稿料や講演料の支払い、弁護士や税理士などへの支払い時に源泉徴収が必要とされることは広く認識されているかと思いますが、業務委託の多様化も進んでおり、実務上判断に迷うケースも生じています。

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例えばIT系の業務を個人に委託した場合はどうでしょうか。

原稿等の報酬の中に「デザインの報酬」という項目が定められており、委託した業務がこの範疇に入るものでしたら源泉の対象となります。

したがって、例えばウェブサイトの製作を委託した場合、主としてそのサイトの設計を委託した場合は源泉徴収の対象とすべきということになりますが、一方で設計されたデザインどおりにウェブサイトを構築する業務(単なるコーディングなど)を委託する場合は、源泉徴収は必要ないと考えられます。

また、源泉徴収が必要となる専門家への報酬の範囲に「技術士又は技術士補」への報酬が含まれていますが、施行令上、この技術士又は技術士補の資格の有無は問われておらず、「高等の専門的応用能力を必要とする事項について計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者」に該当すると認められる場合はその者に支払う報酬については源泉徴収が必要となります。

報酬を支払うIT技術者がこのレベルにあると認められる場合には検討する必要があります。

注意点

その他、分かりにくいのですが、原稿等の報酬の中に「技芸、スポーツその他これらに類するものの教授若しくは指導又は知識の教授の報酬」という項目が含まれておりますので、例えばジムやスポーツクラブがそのインストラクターと業務委託契約を結んだ場合は、その報酬は源泉徴収の対象となります。

また、これも分かりにくいのですが、プロ野球選手やプロサッカー選手と同じ条項に、モデルへの報酬や保険等の外交員、電力計の検針人への報酬も源泉徴収の対象と定められております。

関連する支出が想定される企業のご担当者はご確認ください。

業務委託報酬の源泉徴収の必要性については特に専門性の高い業務について判断に迷うケースも多く、事前に税理士とご相談いただいた方がよいかと思います。

ところで、業務委託契約に基づく支払いが源泉徴収の対象となるのはあくまで個人に対する支払いに限られますので、法人間の契約においては必要ありません。弁護士や税理士業務に対する対価であっても私どものような弁護士法人や税理士法人へ支払う場合に源泉徴収を考慮する必要はありません。

ただ、一点気を付けていただきたいことは、支払先が法人であっても外国法人である場合、その支払い時に広く源泉徴収が必要となるということです。支払いの相手の組織形態につき十分ご留意ください。

税率

最後に源泉所得税の税率ですが、原則として100万円以下の支払いについては10.21%、それを超える部分については20.42%となります(司法書士への報酬等、一部例外はあります)。源泉所得税についても平成49年まで復興特別所得税の適用がありますので、この2.1%増し部分をお忘れなきよう納付額を計算するようにしてください。

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