弁護士 杉浦 恵一
最近の報道で、いわゆる「頂き女子」(男性などから信頼関係や恋愛感情等の人的関係を基に金銭・物品を受け取る人物のこと)が詐欺で逮捕された上、その人物から売掛金を受け取ったホストクラブのホストや店舗責任者が、組織犯罪処罰法違反で逮捕されたという報道がありました。
この事案では、受け取った金銭がもともと詐欺によって取得された金銭であるとされています。
つまり「頂き女子」が金銭を受け取った行為が詐欺によるものだと認定されていることが前提にあります。
(※全ての「頂き女子」が犯罪をしているということではなく、単純な贈与等の場合も考えられます)
組織犯罪処罰法(正式な名称は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」)では、「犯罪収益」として、死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役等の刑が定められている罪の犯罪行為により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産と定義しています(組織犯罪処罰法2条2項1号)。
詐欺罪は懲役刑の長期が4年を超えていますので、ここでは詐欺で得た財産は「犯罪収益」に該当することになります。
そして、組織犯罪処罰法では、その11条で「犯罪収益等収受」の罪として、以下のような内容が定められています。
組織犯罪処罰法11条
「情を知って、犯罪収益等を収受した者は、七年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。」
つまり、犯罪収益であることを知ってそれを受け取っただけでも、犯罪収益等の収受の罪により罰せられることになります。
上の例では、詐欺によって得られた金銭であることを知りながら、ホストクラブの売掛金を受け取ったという状況のようです。
報道では、共犯であることを認めたり、捕まる時は一緒だというメッセージをやりとりしていたと報道されていますので、受け取った金銭が犯罪収益によるものだと認識していたと、警察は判断しているようです。
例外として、「法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者」と「契約の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者」は除外されています。
具体的にどのような場合にこれらの例外に当たるのか、非常に分かりにくい書き方にはなっていますが、代金の支払いとして受け取った場合であっても、最初から(契約の時から)犯罪から得られた収益で支払いがされることを知っていた場合には、教唆(犯罪をするようにそそのかすこと)やほう助(犯罪をしやすように援助すること)に当たらなくても、このような犯罪収益の収受の罪に当たる可能性がありますので、注意が必要でしょう。