企業法務の仕事をしていると、時々、ご依頼者である会社様より
「株主から株主名簿を見せろと言われたが、見せないといけないものなのか。」
というご質問を受けることがあります。
企業法務の仕事をしていると、時々、ご依頼者である会社様より
「株主から株主名簿を見せろと言われたが、見せないといけないものなのか。」
というご質問を受けることがあります。
もちろん、会社様は、株主名簿を見せたくないからこそ、上記のような質問をされていると思います。
会社様が株主名簿を見せることに抵抗感があるのは、以下の2つの理由があると推察されます。
この点、会社法は、株主名簿の閲覧請求につき、『株式会社は、拒否事由がない限り、株主又は債権者からの株主名簿の閲覧及び謄写を拒否できない』旨を定めております。
つまり、株式会社は、株主名簿の閲覧及び謄写請求を受けた場合、原則としてこれに応じる必要があるのです。
以上のとおりですので、会社は、株主の個人的な興味や、会社の業務の遂行を妨げるような目的での閲覧請求に対しては、拒否することができます。
それでは、ある少数派株主が、他の株主に対し、議決権の代理行使を勧誘するべく(すなわち、多数派工作を図るべく)、株主の氏名、住所等を把握することを目的として株主名簿の閲覧を請求した場合、会社は上記拒否事由1(その権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき)に該当することを理由として、閲覧を拒否できるのでしょうか。
この点について争われた裁判例(東京地裁平成24年12月21日)では、『自己に賛同する同志を募る目的で株主名簿の閲覧謄写の請求をすることは、株主の権利の確保又は行使に関する調査の目的で行うものと評価すべきである』と判断され、上記拒否事由1にはあたらないものとして、閲覧の拒否を認めませんでした。
この判例の考え方を前提とした場合、会社が株主名簿閲覧請求を拒否できるケースは、限定的にとらえるべきかと思われます。
このブログをご覧の会社様も、株主や債権者から株主名簿の閲覧請求を受けたときは、理由なくこれを拒否するのではなく、上記拒否事由1~5に該当するか否かを慎重にご検討のうえ、ご判断ください。