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2022年8月3日
名古屋総合法律事務所
杉浦恵一
以前の裁判所判例・運用では、預金は金銭債権であり、金銭債権は相続の開始とともに当然に分割されるという解釈から、預金も相続開始とともに当然に分割され、各相続人の相続分に応じて、金融機関に払い戻しの請求をすることができていました。
しかし、裁判所判例が変更になり、預金は遺産分割を経なければ、原則として払い戻しができないように変わりました。
そのため、以前は、葬儀費用や税金等のために、自分の相続分の分だけ預金の払い戻しを請求するという方法があったのですが、現在はその方法ができなくなり、何らかの理由で金銭が必要な際に、どのように対応するかの問題があります。
それでは、どのような方法が考えられるでしょうか。
金融機関は、被相続人がなくなり、相続が開始されたことを把握すると、預金口座の出入金を止め、預金口座から預金を引き出すことができなくなります。
金融機関との話し合いによっては、入金だけ継続したり、固定資産税やローンの引き落としだけ継続するといったような、一部の入出金だけは続ける場合もあります。
逆に言えば、金融機関は、被相続人が亡くなったことを把握できなければ、預金口座の出入金を止めることはせず、例えばキャッシュカードと暗証番号が分かっていれば、限度額の範囲で引き出しをすることが可能になります。
葬儀費用などは、場合によってはこのような方法で用意することもあり得ます。
しかし、被相続人が亡くなった以上、本来であればキャッシュカードを使う権限がないと考えられますし、他の相続人との間や金融機関との間でトラブルになる可能性があることから、この方法は避けた方がいいでしょう。
預金が遺産である以上、遺産分割をすることで取得者が決まれば、金融機関から払い戻しを受けることができます。
この方法が最も通常の方法だと考えられますが、相続人間でもめていると、遺産分割をするまでに非常に長い時間がかかる可能性があります。
遺産分割は、話し合いで終えることができれば、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印を押印し、印鑑登録証明書を添付することで完成します。
金融機関は、そのような遺産分割協議書と印鑑登録証明書があれば、通常は預金の払い戻しに応じることになります。
話し合いで解決できない場合には、裁判所に遺産分割調停を申し立て、そこでも話がつかなければ、調停が不成立となり、審判という手続に移行し、最終的には裁判所が遺産分割の方法を決定します。
その決定に基づいて、最終的には預金の払い戻しが可能になりますが、長ければ数年単位で時間がかかることもありますので、いつ預金を払い戻すことができるのか、見通しが難しいと言えるでしょう。
民法改正によって新設された預金の払い戻し制度として、民法909条の2に基づく払い戻しというものがあります。
民法909条の2は、以下のような条文になっています。
「各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」
かなり読みにくい条文ですが、最近では銀行のホームページに解説が載っている場合もあります。
払い戻しができる金額は、相続開始時の預金額の3分の1に払い戻し請求者の法定相続分を乗じた金額を上限(ただし現状では150万円を超えることができない)として、他の相続人の同意等がなくても、払い戻しされます。
1金融機関につき150万円が上限になっていますので、葬儀費用や一時的な固定資産税などは支払える可能性がありますが、相続税など多額の金額になってくると、支払いが難しくなってくると場合も想定されます。
預金の払い戻し制度は、裁判所の関与しない上記の制度と、裁判所の判断による制度があります。家事事件手続法200条3項で定められていますが、この条文は、以下のようになっています。
前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。」
こちらも、かなり長めの条文ではありますが、要件としては、①遺産分割の調停・審判の申し立てがなされている、②相続財産に属する債務の支払いや相続人の生活費の不足などの事情で預金の払い戻しが必要、③他の共同相続人の利益を害さない、という場合に、裁判所の決定で、仮に預金の払い戻しをすることが可能になっています。
こちらは、必要性を証明することが難しい場合もありますが、150万円の上限がありませんので、この手続きを使うことも考えられます。
ただし、この手続きは、裁判所に遺産分割調停等を申し立てていなければできませんので、注意が必要です。
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