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VOL.106 2021/05/18【履歴書の様式が変わった!~公正な選考について考えてみましょう~】


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vol.106 本号の内容

2021年05月18日

  • 履歴書の様式が変わった!~公正な選考について考えてみましょう~

名古屋総合法律事務所
社会保険労務士 増田友子

履歴書の様式が変わった!~公正な選考について考えてみましょう~


はじめに

最近、「LGBT」や「トランスジェンダー」という言葉を耳にすることも多くなりました。

LGBTとは、以下の言葉の頭文字をとったもので、性的少数者の総称をいいます。

  • L レズビアン(女性同性愛者)
  • G ゲイ(男性同性愛者)
  • B バイセクシュアル(両性愛者)
  • T トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性別と異なる性別で生きたいと願う、または現に生きている方。性別違和ともいわれる)

これまで人事労務管理に携わってきた中でも、実務の中で性的マイノリティーにまつわるご相談を事業主様から受けたことは、実はありません。

が、書類への「性別の記入」という観点で気になる動きが最近増えてきているように感じます。

例えば、高校生の制服に男女差を廃止した事例。
ブレザーの制服の学校において、スラックスやスカートを性別に関係なく着用可能にする学校が増えているとのことで、学生服製造販売大手のT社においても「ジェンダーレス制服」と銘打ち販売、中でも女子用スラックスが、2021年4月から1000の中学・高校が採用するヒット商品になったとのことです。(データは日経クロストレンド4月13日記事より)

また、公立高校の入学願書の性別欄をなくす動きが急速に広がり、2019年春の入試の際は性別欄撤廃に取り組んでいたのは2府県だけだったものが2021年春の入試においては41道府県が対応を表明、うち7県は、今春に行った入試からなくした、との記事も目にします。(朝日新聞デジタル2020年12月30日記事より)

都道府県、市町村を統括する地方自治体において、「法的に困るもの以外は性別欄をなくす、県庁全体の流れ」等の同新聞社取材結果もあるといいます。

概要

さて、企業の採用活動の際、事業主は応募者に対し、一般的に履歴書、又はエントリーシートの提出を求めることがほとんどです。

これまでは、「JIS規格の履歴書」を応募書類として求めることも多く、JIS規格の履歴書という文言に違和感を覚えることはなかったように思います。

2021年4月16日、厚生労働省が「新たな履歴書の様式例の作成について」という報道資料を発表し、厚生労働省ホームページに「厚生労働省が作成した履歴書様式例」を掲載しました。

厚生労働省自らが、初めて、その推奨する履歴書の様式を公表、ホームページ掲載するに至った経緯は、「労働政策審査会安定分科会資料」にて明らかにされています。それによりますと、作成に至った背景は以下のとおりです。

  1. 厚生労働省では、これまで公正な採用選考を確保する観点から、一般財団法人日本規格協会(JIS)が示していたJIS規格の履歴書の様式例の使用を推奨していた。
  2. 令和2年7月に、LGBT当事者を支援する団体から、厚生労働省、日本規格協会等に対して履歴書様式の検討(性別欄の削除等)を求める要請が行われた。
  3. 当該要請を契機に、日本規格協会は令和2年7月、JIS規格の履歴書の様式例を削除した。
  4. このため、これに代わるものとして、公正な採用選考を進める上で参考となる様式を、厚労省が初めて定め公表、発表した。

たしかに、現在、JIS規格の履歴書というものは削除され、存在しません。

よって、厚生労働省が「厚生労働省履歴書様式」を発表し、採用手続き時には、その様式を参考にしつつ公正な採用選考を行うよう、事業主にお願いしているということのようです。

これまでのJIS規格履歴書と厚生労働省履歴書様式例との相違点は、以下のとおりです。

  1. 性別欄は〔男・女〕の選択ではなく任意記載欄とされた。なお、未記載とすることも可能とされた。
  2. 「通勤時間」「扶養家族数(配偶者を除く)」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の各項目は削除された。

加えて、「履歴書の様式に本様式例と異なる記載欄を設ける場合は、公正な採用選考の観点に特に御留意をお願いします。」とも掲載し、注意を促す内容となっています。

厚生労働省 新たな履歴書の様式例の作成について 資料はこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_kouseisaiyou030416.html

所感

採用選考をする際に、応募者の性別情報を入手することが当たり前でない、という流れができつつあるように感じます。

事業主が独自の応募書類を定める場合に、どのような履歴書様式を指定するのかについて、求職者に性別を尋ねる合理的な理由を説明できるかどうかといったことが問われているとも考えられます。

身元保証人が必要だと法定されているわけではありませんが、何かあった際に入所者本人では判断や対応ができない場合や、入所者が亡くなった場合に誰が主に責任をとるのかという問題があり、どうしても身元保証人を必要とする場合が多いようです。

性別に限ったことではありませんが、個人情報の収集について、確実に厳しさを増している昨今、世の中が少しずつ変化していることを感じさせる発表でした。

あなたの所属する会社では、どのように考えられていますか。
事業主側だけの問題ではありません。
組織全体で利潤を追求し社会貢献をする共同体の一員である従業員、ひとりひとりの意識改革も必要になっているのではないでしょうか。

社内研修や、外部セミナーの受講などを活用し、あらゆるマイノリティーに関する正しい知識を取り入れるとともに、先進的な取り組みをしている事業所の事例なども勉強してみると良いのではないでしょうか。


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