契約書作成の意義

「契約」とは

契約とは、当事者間での合意のことであり、当事者が交わした約束を指します。 ただし、約束とはいえ、強力な拘束力が与えられておりますから、その効果は、単に「約束を守れ」という道徳的意味合いにとどまらず、当事者を法的に拘束いたします。

契約は、申し込みの意思表示と、それに対する承諾の意思表示の合致によって成立します。 売買契約を例に挙げると、「●●を▲▲円で売ります」という売主と、「●●を▲▲円で買います」という買主の意思が一致することにより(●●と▲▲は同じ内容が入ります。)、『●●を▲▲円で売買する』という売買契約が成立します。
ここでのポイントは「意思が一致すれば」契約は成立するのであり、「契約書の作成」は、契約の成立に必要な条件とされていないということです。つまり、口頭でも契約は成立することとなります。

「契約書」の意味は何か

それでは、なぜ契約書の作成が推奨されるのでしょうか。その意味合いについて考えたいと思います。

(1)契約事項の適正性の事前判断

当事者は、契約内容を自由に定めることができます。
ただし、強行法規や判例等による制限は受けます。
特に、強行法規に反する契約条項は効力を持ちませんので、契約内容が強行法規に反するものであれば、契約当事者は、期待していた利益を受けられない可能性もあります。
また、契約内容が法令に違反しているにもかかわらず、企業がその契約内容に従って法令違反行為を行ってしまった場合、損害賠償請求を受けたり、企業イメージの低下にもつながる可能性もあります。
そこで、 事前に合意内容の適正性を確認するという観点からも、契約書を作成することは重要だと考えます。

(2)当事者(担当者)の変更における契約履行の円滑化

特に、法人様が契約書の主体となっている場合で、代表者や担当者が変更する事情が発生した場合、次の代表者や担当者は、もし契約書が存在していれば、これを確認することにより、 契約事項を速やかに把握し、契約の履行を円滑に行うことが可能です。
この点は意外と見落としがちですが、 コンプライアンスの観点から見ると、「契約当時の事情が全く分からない」というのは、非常に大事な問題となってまいります。

(3)契約事項の証明の容易性(紛争の予防・訴訟のための証拠化)

上記のとおり、契約は口頭でも成立します。しかし、口約束の場合、言った・言わないの紛争が生じやすいのはもちろんのこと、それ以外でも口頭の約束だと詳細な部分まで詰めていないことが多いので、そういった 細かなところ(約束していない事項)に関する解釈について、後日紛争となる可能性があります。
なお、ご依頼者様に契約書の有無を確認すると、「見積書、注文書、請書だけは作っている」との回答をされる方もいらっしゃいます。
これらの書類も、契約書の代替書類として利用できる可能性はあります。
しかし、これらの書類では詳細な内容までしっかり詰められていることは少ないので、やはり契約書を作成することには大きな意味があると考えます。

このように、契約書の作成意義は多岐に渡ります。
他方、契約書の作成業務は、契約書をチェックするための感覚と慣れがとても重要であり、弁護士であれば誰でもできるという業務ではありません。

弊所では、契約書の作成業務も承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

ご相談の流れはこちら