第5話 不都合なウワサ

1. あらすじ

光(内山理名)が社長となって3年。大(永井大)がアメリカから帰ってきた。勝俣(竹中直人)や純三(柳沢慎吾)たちベテラン職人と若手の間にも連帯感が生まれ、会社は順調だ。

光は設備の刷新を決意。銀行員の長谷川(村上淳)に4千万円の借り入れを相談するが拒否される。その後、経理の打越(忍成修吾)からダリア精機の可能性を知らされた長谷川は、光の相談にのるようになる。

しかし、それが周囲の誤解を生むことになり・・・。

(マチ工場のオンナ|NHK ドラマ10 – NHKオンライン
https://www6.nhk.or.jp/drama/pastprog/detail.html?i=4588から一部引用)

2. 社長就任3年後、4000万円の追加融資での機械購入にチャレンジ

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ダリア精機では、創業以来の40年選手の機械をだましだまし使っていた。もし機械が止まったら取引先に多大な迷惑をかけることになり、また、それはダリア精機にとっても大きなリスクでした。

そこで光は、主要な機械の更新としてマシニングセンター (machining center)の購入を計画しますが、問題が2つ立ちはだかる。

まず1つ目の問題はもちろん資金。
概算で4000万円の費用を全額追加融資で用意しようとする。

すでに、ダリア精機は、銀行に1億5000万円の借入残があり、工場と自宅の土地、建物が担保に入っており、さらに信用貸しで4000万円の融資を依頼する。

もう1つの問題点は、機械の購入先です。
光は、機械商社にマシニングセンターの購入をあたるが、どこも「初めてのお客様とはやり取りさせていただいておりません」と冷たくあしらわれる。

3. ダリア精機の可能性

光は、打越の父がゴルフ中に倒れ意識がなくて入院中と知り、打越を実家(東京)に帰させます。打越は、実家に帰る前に長谷川に会い、ダリア精機の可能性について長谷川に伝える。

長谷川 「メガバンクのバンコク支店にいたようなエリート銀行員が、一体何やらかしたら、あんな小さな町工場で経理の仕事を」

打越は、ダリア精機が今回の設備投資によって、今後どれだけの売上を上げられるかの分析データを渡し、

「現に名古屋オートモーティブから新規の発注をいただいています」

「銀行員にとって大事なのは目利きですよね。長谷川さんほどの方であれば、今、ダリア精機に融資することのメリットをわかっていただけるはずです……面白いですよ、ダリア精機は。銀行なんかよりもずっと」

4. 長谷川の気持ちの変化

長谷川は、光から詳しい話を聞くためダリア精機を訪問する。

光は、長谷川を工場に案内する。工場はきちんと整理整頓されている。

そして、光のアイデアで、図面にバーコードがプリントアウトされた紙がつけられていて、バーコードの読み取りで、パソコンで作業工程が管理されている。

「単純作業は機械に任せて、熟練の職人はより難しい仕事に集中してもらえば、作業効率は上がります。」

「このカーブの製品。2年まえにかっちゃんと一ノ瀬くんが、3分の1の材料費で作る方法を考えついたんです。でも、うちにある機械では作れずにいました。今回マシニングセンターを入れれば、このアイデアが実現できるのです」

「今のダリヤ精機の設備では作れない製品も受注できるようになります。必ず業績は上がります。」

「お約束します。融資していただけたら、必ず結果は出します」
長谷川は、支店長岡本(多田木亮佑)にダリア精機への追加融資の検討を依頼する。

岡本  部下に「参った参った。長谷川君がさあ」「ここだけの話だけどさ……ダリア精機の若い女社長さんに、えらくご執心で」

夫の大の勤務先でも噂になる。
そういう状況で、光が銀行を訪れて融資申請書類の分厚い資料を長谷川に提出する。しかし、とても不十分な内容でした。
長谷川と光は人目を避けるように銀行を出て行く。そして、ダリア精機で翌日朝までかかり融資申請書類を作る二人。

そして光と大の間に距離が生まれてしまう。

5. 原作では

原作では、2年目の「チャレンジ」で設備を更新しています。それも、資金4000万円は、1年目のリストラと改善活動の成果による現金です。おそらく青色申告の欠損金が繰越されていて、1年目の利益に課税されることがなくて手元資金が蓄積できたのでしょう。

したがって、ドラマにあるような銀行員との不倫という不都合なウワサは、ドラマでの創作です。また、ダイヤ精機が購入したのは、マシニングセンターではなく、

NC(数値制御)旋盤、汎用フライス、研磨機、NC研磨機の4台で、1台1000万円ほどで総額4000万円でした。

しかし、4000万円の現金買いでも機械商社はどこも「一見さんお断り」で機械をダイヤ精機に売ってくれなかったのです。

また、原作でも、諏訪貴子社長は、社長に就いてすぐに銀行から身売り話を持ち込まれたことで、製造業で「女性」が経営者になることは、対外的には大きなマイナスであることを嫌というほど思い知らされました。

社長就任後1年くらい経った時、社員は笑って言いました。「いや、社長はたまたま女だっただけですよね。社長は社長。男より男っぽいじゃないですか」

「その一言に救われた。私一人が性別にとらわれ過ぎていたのだと感じた。」

「製造業は男性中心の世界だが、やる気さえあれば、きちんと結果さえ出せば、男性も女性も関係ない。そう思うと、肩の力が抜け、とても楽になった。」と書かれてます。

6. 弁護士浅野の考察

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4000万円の追加融資は一般的には困難で、長谷川の銀行マンとしての仕事に対する意欲が際立っています。

また、光が社長として「工作機械を買う」と決断し、それに向かって一心不乱に突き進む姿に、一経営者として感心させられました。

特に光が身を置く製造業では、特に自動車関連産業は男性中心の世界と言われています。少なくとも日本では。そして、実は弁護士業も男性中心の世界だといわれています。

しかし、私も諏訪社長と同じ考えを思っています。

製造業でも弁護士業でも、「仕事で、やる気さえあれば、きちんと結果さえ出せば、男性も女性も関係ない。」と考えております。

仕事の成果=考え方×熱意×能力 であり、そこに男女の性差はないのです。

その背景にあるのは、製造機械の性能が著しく向上し、またIT化が進行しており、製造業が力仕事の世界でなくなっております。むしろ、知的産業の要素が年ごとに強くなっているのです。

そして、女性の高学歴化、少子高齢化、人口減小時代になり、製造業でも弁護士業でも、業務においては、男女の性差による差はない、製造業も弁護士業も、ともに男性でも女性でも適職の時代が始まっているのです。

現実の社会では、出産・乳児期の育児という性差が障碍になっており、これらの障碍を縮小していくことがこれからの社会の課題と考えております。

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