弁護士 塚本 菜那子
弁護士 塚本 菜那子
取締役、会計参与、監査役及び会見監査人はいつでも、株主総会の決議によって解任することができます(会社法339条1項)。
しかし、解任された者はその解任について正当な理由がない場合には、会社に対して、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(同条2項)。賠償すべき損害の範囲は、取締役が解任されなければ在任中及び任期満了時に得られた利益の額とされています。
従来、裁判例等で、解任に正当な理由があると認められ事例としては以下のものがあげられます。
① 代表取締役の解任
② 取締役の解任
会社が、一人の取締役が担当していた事業部門を廃業した場合。廃業は、その取締役が事業を展開する努力もせず、その能力がなかったことが理由であった。
外国現地法人で勤務する目的で就任した使用人兼取締役が、外国現地法人での勤務を理由なく拒否した場合
③ 監査役の解任
監査役が税務処理上の過誤を犯し、会社に不利益を与えた場合
他方で、正当な理由がないと判断された裁判例としては、会社の株の大多数を保有する大株主がいる場合、単にその信頼を失ったからという理由での解任があります(東京地裁平成27年6月22日判例集未登載)
(但し、大株主の意向を無視して独断専行で業務を行った場合の解任には、単に信頼を失ったというだけではなく、⒝と同様の問題として、正当な理由があると判断される可能性はあります。)。
解任の正当な理由は、様々な要素を考慮して判断されるものです。ここまで解任の正当な理由に関する事例を簡単に紹介いたしましたが、上記事例に該当するからといって、上記事例と同様の判断がなされるとは限りません。
取締役や監査役等は、他の従業員と異なり、株主総会決議を経れば解任することができてしまいます。ですから、解任には損害賠償のリスクがあることを念頭に置き、正当な理由の有無を慎重に検討する必要があるでしょう。