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弁護士法人 名古屋総合法律事務所
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vol.38 本号の内容
- 内定の始まりと終わり: 内定者は約束を守るか? (就職内定者と「オワハラ」問題)
- 編集後記
■内定の始まりと終わり: 内定者は約束を守るか?
平成27年7月27日付の日本経済新聞紙上に、「他社辞退 強要なら違法に」という見出しの記事が載っています。
最近では、内定者が選考中の企業に対し、自ら電話を目の前で掛けさせるなどの内定者確保行為が見られ、これらは「セクハラ」や「パワハラ」になぞらえ「(就職活動を)終われハラスメント」、略して「オワハラ」と呼ばれるそうです。
就職内定者への拘束力
従来、就職内定者に対しては、「内定承諾書」を提出させるなど入社を約束させる書面によって就職者を確保しようという動きがありました。このような誓約書は、法的には、内定を承諾した者を強制的に働かせる効力まではありません。日本国憲法第18条では、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と記されており、強制的な労働はそもそも認められないと考えられています。
また、民法第627条1項では、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」とされています。つまり、労働者は、働き始めた後でも2週間前に辞めたいと言えば、労働関係を終了させる、つまり労働者から一方的に辞めることができます。内定者であれば、また働き始めたわけでもないのですから、より拘束力は弱く、内定を一方的に辞退しても違法ではないと解釈されます。
以上のように、企業側には内定者への拘束力があるにも関わらず、現実的には、内定者側が簡単に辞退できるという仕組みがあるといえるでしょう。「オワハラ」と言われるような事例は、企業側が何とか内定者を確保しようとしたために見られるようになったのではないでしょうか。
違法な「オワハラ」にならないために
この「オワハラ」と呼ばれる行為は、違法になる可能性があります。 「オワハラ」の具体例として、次のような事例が挙げられているようです。
- 面接時期を延ばして、他社の選考を受けられないようにする。
- 他社の選考を辞退するまで帰らないように引き留める
- 電話を手渡して、面接のその場で他社の選考を断らせる。
このうち、1.面接を長時間行うことは、選考としての必要性も考えられることから、必ずしも違法性があるとは言えませんが、2.帰らないように引き留める行為や、3.その場で他社の選考を断らせる行為には注意が必要です。これらの行為に関し強制性が濃いと認められた場合は、慰謝料等の損害賠償を請求される民事上の問題や、それを超えて強要罪として刑事上の問題に生じる可能性もあります。
内定者の辞退を防ぐ絶対的な方法はありませんが、少なくとも、内定辞退の問題によって新たな法律紛争が生じるような事態は避けるべきでしょう。
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編集後記
先日、広島市を訪れる機会がありました。
バスや自動車に交じり、数多くの市電が縦横に走り回っていた市街地の光景が、印象に残ります。
色とりどり、種類もさまざま、一両ワンマン車両から最新の連結トラムまで・・・とても魅力的でした。
今年は、太平洋戦争(第二次世界大戦)が終わってから70周年目にあたり、例年に増して多様な行事が開催されているようでした。国内はじめ海外からの多くの訪問者に、原爆ドームや残された多くの資料が、70年前の8月6日に広島が焦土と化したことを伝えています。
現在、弊所からほど遠くない名古屋市美術館において、「画家たちと戦争」展が開催中です(7/18-9/23)。
1931年の満州事変から1945年の太平洋戦争終了まで、当時を生き抜いた代表的な画家たちの作品が展示されています。横山大観、松本竣介、宮本三郎、香月泰男・・・中でも、藤田嗣治「シンガポール最後の日」(1942年:東京国立近代美術館蔵)は圧巻でした。
日本の8月は、お盆を含め、過去に思いを馳せる多くの機会が溢れる月ですね。
暑い毎日が続きますが、皆様どうぞご自愛下さいますようお願い申し上げます。